スマートフォンが使えなくなると、地図も配車も翻訳も止まります。旅行中の不便のうち、事前の準備で防げる割合がいちばん大きいのが、電源とネットの2つです。
この記事では、コンセントの形と電圧、日本から持っていく機器の可否、2026年に変わったモバイルバッテリーの規則、そしてネット回線の選び方を順に扱います。
タイのコンセントは220ボルト
バンコク首都圏電力公社(MWA と並ぶ電力の供給者、MEA)は、自らの安全啓発の中でタイの電圧を220ボルトと明記しています。 周波数は50ヘルツです。地方部を管轄する地方電力公社(PEA)の品質基準では、実際に届く電圧は200〜240ボルトの範囲で管理され、目標値は230ボルトとされています。
一方、日本の電圧は電気事業法施行規則で101ボルトの上下6ボルト以内と定められています。数字にすると2倍強の差ですが、機器にかかる負担はそれ以上です。
電熱線やモーターのような機器では、電圧が2.2倍になると消費電力は約4.8倍になります。 電力は電圧の二乗に比例するためです。100ボルト専用の機器を220ボルトのコンセントに挿すと、数秒で焼けたり、発煙したりします。
挿してよい機器と、いけない機器
判断は感覚ではなく、機器に書かれた表記で決まります。 ACアダプタや本体の銘板にある INPUT(入力)の欄を見てください。
- INPUT: 100-240V 50/60Hz — タイではそのまま使え、変圧器は不要です。 スマートフォンやノートパソコンの充電器、カメラの充電器は多くがこれです
- INPUT: AC100V のように100ボルトだけが書かれている — そのままでは使えません。 もし使うのであれば、変圧器が必要になります
100ボルト専用が残りやすいのは、熱を出す機器です。ヘアドライヤー、ヘアアイロン、電気ケトル、炊飯器などが該当します。海外対応をうたっていない日本国内向けのモデルは日本国内専用で、タイではそのままでは使えません。
多くのホテルでは、ドライヤーや電気ケトルは備え付けがあるので、それを使えば問題ありませんが、備え付けのドライヤーは使いたくない、ヘアアイロンも使いたいなど、自分のお気に入りのものを持っていって使いたいという場合は、変圧器を使うことになります。
ただし、ドライヤーのために変圧器を持っていくのは割に合いません。熱を出す機器をまかなう1000ワット級の変圧器は重く、荷物に入れて運ぶものではないためです。なので、どうしても使いたいという場合は、現地で買うほうが現実的です。
プラグは挿さる。ただしアースは別の話
タイのコンセントとプラグは、タイ工業規格 TIS 166-2549 が定めています。2020年11月11日から強制規格となり、それ以降に流通する製品はこの規格に従います。
差し込み口には、並んだ2つの穴と、アース用の穴が1つあります。2つの穴は、外側が丸いピンを受ける丸、内側が平たいピンを受けるスリットになっていて、ひとつの穴としてつながっています。このため、日本の2本ピンのプラグは、そのまま挿さります。
問題になるのは3本ピンのほうです。ノートパソコンの太い電源ケーブルや、一部の家電のプラグには、アース用のピンがついていたりします。3本ピンの場合、ピンの間隔やアースの形が合わず、そのままでは入らないことがあります。
さらに、アースの穴そのものがない差し込み口もあります。電力公社は、3本ピンのプラグに対して差し込み口が2つ穴しかない場合への注意を出しています。規格が新しくなった今も、古い建物には2つ穴のままの差し込み口が残っていることもよくあるからです。
このとき電力公社が挙げている対処は「差し込み口を3つ穴のものに交換する」で、アースのピンを折ってはいけないと明確に警告しています。折れば感電を防ぐ仕組みそのものが失われるためです。旅行者にできる現実的な備えは、3本ピンの機器を持っていくならタイのプラグに合った変換プラグを用意して持っていくことです。
変換プラグと変圧器は別物
混同しやすいので分けて書きます。
| 種類 | 何をするもの | 必要になる場面 |
|---|---|---|
| 変換プラグ | プラグの形を変えるだけ。電圧は変わらない | 3本ピンの機器を2つ穴の差し込み口に挿すとき |
| 変圧器 | 電圧そのものを220Vから100Vに下げる | 100ボルト専用の機器を使うとき |
変換プラグを使っても、コンセントから出てくる電圧は220ボルトのままです。 形が合ったことと、機器が壊れないことは別の話です。
2026年、モバイルバッテリーの規則が変わった
最近、航空機内でのモバイルバッテリーの扱いに関する規則が変更になりました。飛行機に乗る際には内容を把握して、十分注意しなければいけない内容です。
きっかけは、国際民間航空機関(ICAO)が定める危険物輸送の技術指針の改正です。これを受けて各国が自国の規則を改めているため、タイ発の便だけでなく、日本発の便にも同じ内容がかかります。 往路も復路も同じだと考えてください。
どこから乗っても共通すること
出発地や航空会社が変わっても、次の4点は共通しています。
- 預け入れ荷物に入れられません。 機内持ち込みか、身につけるかのどちらかだけです
- 160Whを超えるものは持ち込めません。 国や航空会社によっては100Whが上限です
- 頭上の物入れに入れてはいけません。 座席前のポケット、足元、身につけるなど、すぐ手が届く場所に置きます
- 短絡を防ぐ措置が必要です。 元の箱に入れるか、端子にテープを貼るか、1個ずつ袋に入れます
日本発とタイ発で決まっていること
日本では、国土交通省が航空法にもとづく告示・通達を改正し、これを受けて定期航空協会(日本の航空会社19社の団体)が2026年4月24日から会員航空会社の全社で統一して運用しています。タイでは民間航空局(CAAT)が規則第122号を2026年6月2日に官報へ公布し、翌6月3日から施行しました。タイの規則はタイの空港を出発するすべての便が対象で、国際線だけでなく国内線も含みます。
| 項目 | 日本発 | タイ発 |
|---|---|---|
| いつから | 2026年4月24日 | 2026年6月3日 |
| 預け入れ | 不可 | 不可 |
| 個数 | 1人2個まで | 1人2個まで |
| 容量 | 160Whまで | 100Wh以下。100〜160Whは航空会社の承認が必要 |
| 機内での充電 | 禁止 | 禁止 |
| バッテリーからの給電 | 禁止 | 禁止 |
| 頭上の物入れ | 入れない | 入れない |
機内でモバイルバッテリーを充電することも、モバイルバッテリーでスマホを充電することも禁止です。 日本もタイも同じです。機内でスマホを充電する手段が実質なくなるということなので、長距離のフライトなら乗る前に充電を済ませておくしかありません。
日本ではさらに注意が要ります。定期航空協会は、預け入れの禁止・160Whの上限・短絡防止・2個の上限・機内での充電の禁止について、航空法により罰則が科される可能性があると明記しています。お願いではなく法令にもとづく制限です。
出発地によって違うこと
個数や機内での使用の可否は、国と航空会社によって差があります。タイへ行く経路でよく通る国の状況は次のとおりです。
- 韓国は2025年3月から独自に規制を始めた国で、2026年4月20日からはICAOの基準に沿った内容になりました。2個まで、160Wh(43,000mAh)以下で、機内での充電も給電も全面的に禁止です
- シンガポールは2026年4月15日から、シンガポール発の便で2個まで、機内での充電を禁止しています
- 中東の航空会社は厳しい傾向があります。エミレーツは1人1個・100Wh以下で、機内での使用を認めていません。カタール航空は2個・100Wh以下で、本体への充電は禁止、機器への給電は条件付きです
- ヨーロッパにはEUとして統一した上乗せ規則がなく、ICAOの基準に各航空会社が独自の条件を加える形です。利用する航空会社の公式サイトで確認してください
- アメリカの連邦航空局(FAA)は160Wh超の持ち込みを禁じ、預け入れも認めていませんが、機内での使用そのものを禁じる連邦規則は設けていません。実際の扱いは各社の規定によります
共通しているのは「預けられない」「160Wh超は不可」で、分かれるのは「機内で使えるかどうか」と「何個まで持てるか」です。 乗る会社の規定を出発前に見ておくと確実です。
自分のバッテリーが規定内か確かめる
Wh の表示があれば、その数字がすべてです。 mAh と両方書かれている場合も Wh を見ます。
Wh の表示がなく mAh しかない場合は、次の式で換算します。
Wh = mAh × 電圧(V)÷ 1000
リチウムイオン電池の公称電圧は3.7ボルトが標準なので、20,000mAh のバッテリーはおよそ74Wh です。100Whの枠に収まります。CAAT自身も、この換算式と「20,000mAh、3.7Vで約74Wh」という例をFAQで示しています。
ただし、表示が薄れて読めないものは、計算する根拠がないため持ち込めません。 空港と航空会社の係員には、容量を確認できないバッテリーの搭乗を認めない権限があると、CAATのFAQに明記されています。
2個の枠に入らないもの
「1人2個」の数え方には例外があります。
- スマートフォンやノートパソコンに内蔵された電池は、この2個に含まれません
- カメラやドローンの予備バッテリーは「予備電池」という別の区分で、モバイルバッテリーの2個とは別枠です
- ノートパソコンやハンディファンのように、他機器への給電が主目的でない機器はモバイルバッテリーに当たりません
なぜ厳しくなったのか
各国が足並みをそろえた背景には、実際に起きた火災があります。
CAATは規則を出した際の発表で、2025年初めに韓国のエアプサン機で起きた客室火災に触れています。調査で頭上の物入れに置かれたモバイルバッテリーが原因と見られたもので、乗客乗員の緊急脱出に至りました。韓国はこの事故を受けて2025年3月から独自の規制を始めており、そこで作られた基準が、2026年3月にICAOの理事会で国際基準として承認されました。 各国の規則が足並みをそろえたのは、この経緯によるものです。
タイでも同種の事例が起きています。バンコクエアウェイズのサムイ〜香港便では、飛行中に乗客のモバイルバッテリーが高温になって発煙・出火し、客室の床が一部損傷してバンコクへ引き返しています。タイ・エアアジアのドンムアン〜ナコンシータマラート便でも同様の事案がありました。
頭上の物入れが禁じられ、手の届く場所に置くよう求められているのは、異常が起きたときに乗務員がすぐ気づいて対処できるようにするためです。
ネット回線は3つの選び方がある
タイでネットを使う方法は、大きく3つに分かれます。
| 方法 | 手続き | 向いている人 |
|---|---|---|
| 現地のSIM・eSIM | 空港や店頭でパスポートを提示して契約 | 長め(1週間以上)の滞在、通信量が多い人 |
| 海外発行のeSIM | 出発前にアプリで購入。現地での手続きなし | 短期、到着後すぐ使いたい人 |
| 日本の回線のローミング | 契約中の会社の海外サービスを使う | 数日の滞在、手続きを増やしたくない人 |
現地のSIMにはパスポートが要る
タイでは、プリペイドSIMの利用者を登録することが通信事業者に義務づけられています。不正利用や詐欺を防ぐための制度で、新規契約でも既存の回線でも、本人の登録が必要です。
このため、現地でSIMを買うときはパスポートの原本が必要です。 コピーでは受け付けられません。店頭でその場で登録されるので、手続き自体は難しくありません。
事業者は、旅行者から見ると実質2社です。AIS と、2023年に True と dtac が統合した True-dtac です。空港にはどちらも到着階にカウンターを置いています。dtac の公式案内では、スワンナプーム・ドンムアン・プーケット・サムイ・チェンマイ・クラビの各空港に店舗があると案内されています。
eSIM は端末の対応が前提
eSIM は物理的なカードを差し替えずに回線を追加できる仕組みです。出発前に購入して設定を済ませておけば、到着した瞬間から使えます。 現地の窓口に並ぶ必要も、日本のSIMを抜いて紛失する心配もありません。
条件は2つあります。端末がeSIMに対応していることと、SIMロックがかかっていないことです。
後者については、日本では総務省のガイドラインにより、2021年10月1日以降に発売された端末は、正当な理由がない限りSIMロックをかけて販売してはならないことになっています。 2023年10月からは経過措置も終わり、新規に売られる端末は原則としてロックなしです。それ以前に買った端末を使う場合は、購入元で解除の可否を確認してください。
ローミングで済ませる選択肢
数日の滞在なら、いま契約している回線のまま使うのがいちばん手間がかかりません。
たとえば楽天モバイルは、海外100以上の国と地域で毎月2GBまで追加料金なしでデータ通信ができ、タイも対象です。SIMの差し替えは不要で、アプリでローミングを有効にするだけです。超過後は速度が制限され、追加は1GBあたり500円です。
他社の海外パケット定額は、1日あたりの定額制が中心です。滞在日数と日額を掛けた金額と、現地SIM・eSIMの価格を比べて決めるとよいと思います。
Wi-Fi はあるが、それだけには頼らない
ホテル、カフェ、ショッピングモールでは、フリーの無線LANが使えるところが多いです。壁などにSSIDやパスワードが貼られていたりしますので、それを使って自由にお店のWi-Fiを使うことができます。接続情報が提示されていない場合でも、Wi-Fiが使えるか店員に尋ねると教えてくれることも多いので、一度聞いてみると良いでしょう。ただし、移動中や屋台街ではフリーのWi-Fiは使えません。 地図や配車アプリを使うことも多いので、そのために自分の回線は用意しておくことをおすすめします。
出発前に決めておく4つ
- 充電器の INPUT 表記を見る。 100-240V と書いてあれば変圧器は不要
- 3本ピンの機器を持つなら変換プラグを1つ。 変圧器が要るなら、持っていくより現地で買う
- モバイルバッテリーは預けられない。 日本発もタイ発も、機内では使えない。Wh表示が読めるものを2個まで
- 回線は出発前に決める。 現地SIMはパスポート必須、eSIMは端末の対応が前提
出典:
- Metropolitan Electricity Authority「なぜプラグは3本ピンなのか」(タイの電圧220ボルト、アースピンの警告、2つ穴の差し込み口への対処)
- Provincial Electricity Authority 電力品質基準(実運用200〜240ボルト、周波数50ヘルツ)
- 電気事業法施行規則 第38条(日本の標準電圧101ボルト±6ボルト)
- タイ工業規格 TIS 166-2549(プラグ・コンセントの規格、2020年11月11日強制施行)
- タイ民間航空局 規則第122号「航空機へのリチウム電池の持ち込みに関する基準・手続・条件」官報143巻特別137号(2026年6月2日公布)
- タイ民間航空局 CAAT NEWS 22/2569(2026年6月4日、規則の背景と事故事例)
- タイ民間航空局「リチウム電池の持ち込みに関するFAQ」(2026年7月17日)
- 定期航空協会「航空機内におけるモバイルバッテリーの取り扱い変更について」(2026年4月14日、共同プレスリリース。2026年4月24日から会員航空会社全社で実施、航空法にもとづく罰則)
- 韓国 国土交通部・政府広報(2025年3月からの独自規制、2026年4月20日からのICAO基準版、2026年3月27日のICAO理事会承認)
- シンガポール民間航空庁(2026年4月15日からのシンガポール発の便への制限)
- 欧州航空安全機関(EU統一の上乗せ規則はなく、ICAOの技術指針に各社が条件を加える構造)
- アメリカ連邦航空局 PackSafe(160Wh超の持ち込み禁止、機内での使用を禁じる連邦規則はない)
- エミレーツ航空・カタール航空 各社の危険物に関する規定(個数と機内での使用の可否)
- dtac「ツーリストSIMカードの登録について」(パスポート原本の必要性、空港店舗)
- 総務省「移動端末設備の円滑な流通・利用の確保に関するガイドライン」(2021年10月1日以降に発売された端末はSIMロックをかけて販売しない)
- 楽天モバイル「海外ローミング(データ通信)」(月2GBまで追加料金なし)


